Little Miss One-way
思いつくままに恋愛小説をつづります。 大学生同士のちょっと変わった恋愛を書いた 「いびつなハート」連載中です。
いびつなハート 9 夜
思い切って外に出たが、視界には学校の周りの見慣れた夜景しか目に入らず、誰もいないのかと拍子抜けした瞬間、後ろから煙が流れてきた。
振り返ると加川くんガラス戸の横の壁にピッタリとくっついて煙草を吸っていた。また口の端を歪めて笑っている。
「なにしてるの? 忍者?」
なんとなく照れてしまい、よくわからないことをいいながら隣に行き、同じように壁にピッタリとくっつく。加川くんが、煙草の箱から一本煙草を出して、こちらに向ける。
「吸う?」
「吸わない。おいしいの?」
私は女の煙草はカッコ悪いという親のすりこみのおかげで、友人たちが煙草を吸おうが勧められようが一切煙草を吸おうと思ったことがない。かといって煙草の煙や臭いが嫌いかというとそうでもないが。
「べつにうまくはないよ。癖かな」
そういって煙をぽっ、と輪っかにして私の目の前に吐き出した。夜の闇に溶けては消えていく乳白色の煙を目で追いながら、私も加川くんも黙って空を見上げていた。ときどき室内から笑い声が聞こえてくる以外は何の音も聞こえなかった。不意に風が吹き、煙草の煙が強く流される。私は寒さに身震いした。ちょっとトイレに行くだけのつもりだったのでかなり薄着だったのだ。
「うーう、寒い。戻るね」
そう言って戻ろうとした私の腕を、加川くんが掴んだ。
「ちょっとまった、もう少し居て」
そう言って、自分の着ている茶色のカーディガンの前を開けて私を包んだ。考える間も、返事をする間も与えない早業だった。煙草のにおいがした。ずっとまた触れたいと思っていた加川くんにあの日以来やっと触れた。その機会は急に訪れたけれど、きっとこのベランダのガラス戸を開けたときから私はこの瞬間を期待していたのだと思う。触れている背中が熱かった。
「吸い終わるまで待って。いやじゃないよな?」
当然だけど一応確かめる、といった風に微笑を浮かべながら加川くんが訊ねる。黙って肯くと、カーディガンの前をあわせるようにしている腕に力がこもった。加川くんのぬくもりに私は充足感を感じていた。ただこの時間が少しでも長く続けばいいと、煙草の火がじりじりと光るのを見ながら思った。
10へ
振り返ると加川くんガラス戸の横の壁にピッタリとくっついて煙草を吸っていた。また口の端を歪めて笑っている。
「なにしてるの? 忍者?」
なんとなく照れてしまい、よくわからないことをいいながら隣に行き、同じように壁にピッタリとくっつく。加川くんが、煙草の箱から一本煙草を出して、こちらに向ける。
「吸う?」
「吸わない。おいしいの?」
私は女の煙草はカッコ悪いという親のすりこみのおかげで、友人たちが煙草を吸おうが勧められようが一切煙草を吸おうと思ったことがない。かといって煙草の煙や臭いが嫌いかというとそうでもないが。
「べつにうまくはないよ。癖かな」
そういって煙をぽっ、と輪っかにして私の目の前に吐き出した。夜の闇に溶けては消えていく乳白色の煙を目で追いながら、私も加川くんも黙って空を見上げていた。ときどき室内から笑い声が聞こえてくる以外は何の音も聞こえなかった。不意に風が吹き、煙草の煙が強く流される。私は寒さに身震いした。ちょっとトイレに行くだけのつもりだったのでかなり薄着だったのだ。
「うーう、寒い。戻るね」
そう言って戻ろうとした私の腕を、加川くんが掴んだ。
「ちょっとまった、もう少し居て」
そう言って、自分の着ている茶色のカーディガンの前を開けて私を包んだ。考える間も、返事をする間も与えない早業だった。煙草のにおいがした。ずっとまた触れたいと思っていた加川くんにあの日以来やっと触れた。その機会は急に訪れたけれど、きっとこのベランダのガラス戸を開けたときから私はこの瞬間を期待していたのだと思う。触れている背中が熱かった。
「吸い終わるまで待って。いやじゃないよな?」
当然だけど一応確かめる、といった風に微笑を浮かべながら加川くんが訊ねる。黙って肯くと、カーディガンの前をあわせるようにしている腕に力がこもった。加川くんのぬくもりに私は充足感を感じていた。ただこの時間が少しでも長く続けばいいと、煙草の火がじりじりと光るのを見ながら思った。
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