Little Miss One-way
思いつくままに恋愛小説をつづります。 大学生同士のちょっと変わった恋愛を書いた 「いびつなハート」連載中です。
いびつなハート 11 中庭にて2
ぱっとステージが明るくなり、左側に見慣れた木下の顔が見えた。右側には黒い帽子を被った清水谷くんがいて、ギターのヘッドが覗いている。ドラムの玲くんはこの位置だと顔がみえない中央でイケメンのボーカリスト影山くんが口を開いた。
「みなさん、こんにちは」
わーっという歓声とドラムの音が観客を盛り上げる。みんな白いシャツと、黒いハーフジーンズをはいている。隣を見ると実花がステージの照明に照らされた頬を紅潮させていた。目がいつもよりもキラキラ輝いている。
「ね、あき、いこいこ!」
実花に腕をつかまれ、ぐいぐいと引っ張られる。目指すは木下の目の前だ。実花は体全体で人垣をかき分けて進み、既にそこに陣取っていた女の子たちのむっとした顔をもろともせず、木下の目の前に落ち着いた。ステージでは影山くんと木下のオープニングMCというか漫才というか世間話が続いている。そのやりとりになんの関係もなく、実花は
「木下ー! かっこいい!」
とか叫んで手を振っている。別にいつも近くでみてるじゃん、と突っ込みを入れたくなる。
木下はライブ中はあまり一人ひとりのお客さんを気にしていないし、私たちに気づいても無視だ。今日も多分気づいていない。私たちに、というか騒いでる実花に、だと思うが気づいたのは影山くんだった。ちらっと見てすばやくウィンクする。私も小さく手を振る。これだから女の子の人気もピカイチなのだ。実花は……木下に釘付けなので気付かなかったようだ。
「それでは一曲目、middle garden !」
影山くんの一声で演奏が始まった。曲に合わせてライブハウスが揺れる。重いベースとバスドラの音がお腹に響く。私も揺れながらリズムに身を任せる。実花はきゃいきゃいと歓声をあげながら飛び跳ねている。
続いて二曲目にはいるころには真冬だというのに汗だくになっていた。飲んでいたお酒も適度にまわって、気分が乗ってくる。いつの間にか振り回している両手からはカシスオレンジの入った紙コップは消えていた。二曲目もノリのいい激しい曲だ。観客全体が、木下たちの演奏に合わせて動いていて何とも楽しい。
曲はギターソロに入り、清水谷くんが中央に出て演奏し始めた。足を閉じて、右側に重心を傾けるような姿勢で、左手の細いきれいな指をすごい勢いで動かしている。弦を右手のピックがはじくたびに、唸るようなギターチューンが流れ出す。手の動きとは対照的に、私の位置から見える横顔は石膏の彫刻みたいにつるんとして、無表情に左手を見つめている。その姿がこの熱に浮かされたようなライブハウスの中に溶けずに残った氷のようで、目が覚めたような思いがした。ギターソロが終わり、清水谷くんは元の位置にもどり、私の位置からはほとんど見えなくなって、激しい曲と影山くんの声に会場が包まれても、私はしばらくその余韻に浸っていた。
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「みなさん、こんにちは」
わーっという歓声とドラムの音が観客を盛り上げる。みんな白いシャツと、黒いハーフジーンズをはいている。隣を見ると実花がステージの照明に照らされた頬を紅潮させていた。目がいつもよりもキラキラ輝いている。
「ね、あき、いこいこ!」
実花に腕をつかまれ、ぐいぐいと引っ張られる。目指すは木下の目の前だ。実花は体全体で人垣をかき分けて進み、既にそこに陣取っていた女の子たちのむっとした顔をもろともせず、木下の目の前に落ち着いた。ステージでは影山くんと木下のオープニングMCというか漫才というか世間話が続いている。そのやりとりになんの関係もなく、実花は
「木下ー! かっこいい!」
とか叫んで手を振っている。別にいつも近くでみてるじゃん、と突っ込みを入れたくなる。
木下はライブ中はあまり一人ひとりのお客さんを気にしていないし、私たちに気づいても無視だ。今日も多分気づいていない。私たちに、というか騒いでる実花に、だと思うが気づいたのは影山くんだった。ちらっと見てすばやくウィンクする。私も小さく手を振る。これだから女の子の人気もピカイチなのだ。実花は……木下に釘付けなので気付かなかったようだ。
「それでは一曲目、middle garden !」
影山くんの一声で演奏が始まった。曲に合わせてライブハウスが揺れる。重いベースとバスドラの音がお腹に響く。私も揺れながらリズムに身を任せる。実花はきゃいきゃいと歓声をあげながら飛び跳ねている。
続いて二曲目にはいるころには真冬だというのに汗だくになっていた。飲んでいたお酒も適度にまわって、気分が乗ってくる。いつの間にか振り回している両手からはカシスオレンジの入った紙コップは消えていた。二曲目もノリのいい激しい曲だ。観客全体が、木下たちの演奏に合わせて動いていて何とも楽しい。
曲はギターソロに入り、清水谷くんが中央に出て演奏し始めた。足を閉じて、右側に重心を傾けるような姿勢で、左手の細いきれいな指をすごい勢いで動かしている。弦を右手のピックがはじくたびに、唸るようなギターチューンが流れ出す。手の動きとは対照的に、私の位置から見える横顔は石膏の彫刻みたいにつるんとして、無表情に左手を見つめている。その姿がこの熱に浮かされたようなライブハウスの中に溶けずに残った氷のようで、目が覚めたような思いがした。ギターソロが終わり、清水谷くんは元の位置にもどり、私の位置からはほとんど見えなくなって、激しい曲と影山くんの声に会場が包まれても、私はしばらくその余韻に浸っていた。
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