Little Miss One-way
思いつくままに恋愛小説をつづります。 大学生同士のちょっと変わった恋愛を書いた 「いびつなハート」連載中です。
いびつなハート 14 中庭にて4
カラオケに到着し、個室に通されると、さっそく影山くんが曲を入れだす。部屋は二十人用ぐらいのパーティールームで、壁に沿ってソファーがあり、真ん中に四角い小さめのテーブルが二つ、ところどころに丸椅子が置いてある。
広すぎる部屋にみんなバラバラに座った。すでに影山くんが熱唱をはじめる中、店員が入ってきた。みんな口ぐちに自分の注文を言う。私も喉がすごく乾いていたのでビールを注文した。
ライブで飛び跳ねて足が疲れていた。座って運ばれてきたビールを飲んで落ち着くと、思わずふう、と息をつく。
それにしても、木下のことばかりきにしていたけれど、加川くんがえりとなんでもないというのは本当なのだろうか。別にウソをついてもしょうがないので本当なんだろうけど、あの日腕を組んで歩いていた姿はどう見ても恋人同士だった。きっとただの後輩ではないんだろう。でも「そんなんじゃない」という言葉を聞いてなんとなくほっとしている自分がいる。私は思ったよりポジティブだな。そんなこと思っていたら
「木下、木下ってば」
実花の声で正気に戻る。また木下がぼーっとしていたらしい。木下はどうしたんだろう。ふと隣りを見ると清水谷くんが座っていた。
「清水谷くん」
「なに?」
清水谷くんが静かに微笑みながらこっちを見る。
「さっきから木下変じゃない? なんか加川くんが連れてきたえりちゃんを見た時からみたいな気がするんだけど」
「ああ……」
清水谷くんはちょっと言葉に詰まる。やっぱり何か知っているようだ。
そのとき、影山くんの熱唱が終わり、玲くんがドラ声で英語の激しい曲を歌い始めた。ただでさえひかえめな清水谷くんの声はこの距離では聞こえそうにない。ひとまず玲くんの歌でも聞こう、とカラオケのディスプレイに目を移すとフワッと空気が動いて、青リンゴのようなさわやかな匂いがした。振り向くとすぐ近くに清水谷くんの顔があった。
「あきに会いたがってるんだって」「きにいったらしいよ」という言葉を思い出して思わず固まる。木下や実花の話をそのまま本気にしたわけじゃないけれど、やっぱり意識せずにはいられない。清水谷くんが小さな声で話す。
「あの、あきちゃんだからいうけど……」
そう言って清水谷くんはビールを一口飲むと
「木下と俺は高校一緒なんだけど。あのえりちゃんさ、俺と木下が高校のときに仲良かった子になんか似てるんだよね。レイコって子に」
「木下の元カノに?」
「いや、付き合ってはいなかった。その子の家も学校も何も知らなくて。俺達地元でもバンドやってたんだけど、よくやってたライブハウスの常連さんだった」
「ふーん、でも知り合いの女の子に似てるだけであの反応?」
「うん、それが、ライブのとき以外もよく三人で遊んでたんだけど、突然いなくなったんだよね。急に連絡が全くつかなくなっちゃって。俺達携帯ぐらいしか知らなかったからそのまま音信不通になった。木下が当時あの子のこと好きだったかわからないけど、最後そんな感じだったからじゃないかな」
「なるほどね……」
「あーき!」
顔を寄せてひそひそと話していると、いきなり実花が割り込んできた。話している内容が内容だけに思わずドキっとする。
「仲いーじゃなーい」
実花はにやにやしながら冷やかしてくる。別に色気のある話をしてるわけじゃない。実花にも関係あることなんだけど、と思いつつもまあね、と流して、
「ほら、実花もなんか歌いなよ」
とリモコンを押しつけて話の内容に突っ込まれないうちに席を立つ。ちょっと冷やかされて、清水谷くんとの距離に照れてしまったのもある。玲くんのリサイタルがちょうど終わったところで部屋を出てトイレに向かった。
レイコちゃんか……木下にもそんなおセンチなところがあったのだ。実花がこのことを知ったらショックを受けるに違いないし、しばらく黙っていようと思いながら、ゆっくりお手洗いに向かった。
15へ
広すぎる部屋にみんなバラバラに座った。すでに影山くんが熱唱をはじめる中、店員が入ってきた。みんな口ぐちに自分の注文を言う。私も喉がすごく乾いていたのでビールを注文した。
ライブで飛び跳ねて足が疲れていた。座って運ばれてきたビールを飲んで落ち着くと、思わずふう、と息をつく。
それにしても、木下のことばかりきにしていたけれど、加川くんがえりとなんでもないというのは本当なのだろうか。別にウソをついてもしょうがないので本当なんだろうけど、あの日腕を組んで歩いていた姿はどう見ても恋人同士だった。きっとただの後輩ではないんだろう。でも「そんなんじゃない」という言葉を聞いてなんとなくほっとしている自分がいる。私は思ったよりポジティブだな。そんなこと思っていたら
「木下、木下ってば」
実花の声で正気に戻る。また木下がぼーっとしていたらしい。木下はどうしたんだろう。ふと隣りを見ると清水谷くんが座っていた。
「清水谷くん」
「なに?」
清水谷くんが静かに微笑みながらこっちを見る。
「さっきから木下変じゃない? なんか加川くんが連れてきたえりちゃんを見た時からみたいな気がするんだけど」
「ああ……」
清水谷くんはちょっと言葉に詰まる。やっぱり何か知っているようだ。
そのとき、影山くんの熱唱が終わり、玲くんがドラ声で英語の激しい曲を歌い始めた。ただでさえひかえめな清水谷くんの声はこの距離では聞こえそうにない。ひとまず玲くんの歌でも聞こう、とカラオケのディスプレイに目を移すとフワッと空気が動いて、青リンゴのようなさわやかな匂いがした。振り向くとすぐ近くに清水谷くんの顔があった。
「あきに会いたがってるんだって」「きにいったらしいよ」という言葉を思い出して思わず固まる。木下や実花の話をそのまま本気にしたわけじゃないけれど、やっぱり意識せずにはいられない。清水谷くんが小さな声で話す。
「あの、あきちゃんだからいうけど……」
そう言って清水谷くんはビールを一口飲むと
「木下と俺は高校一緒なんだけど。あのえりちゃんさ、俺と木下が高校のときに仲良かった子になんか似てるんだよね。レイコって子に」
「木下の元カノに?」
「いや、付き合ってはいなかった。その子の家も学校も何も知らなくて。俺達地元でもバンドやってたんだけど、よくやってたライブハウスの常連さんだった」
「ふーん、でも知り合いの女の子に似てるだけであの反応?」
「うん、それが、ライブのとき以外もよく三人で遊んでたんだけど、突然いなくなったんだよね。急に連絡が全くつかなくなっちゃって。俺達携帯ぐらいしか知らなかったからそのまま音信不通になった。木下が当時あの子のこと好きだったかわからないけど、最後そんな感じだったからじゃないかな」
「なるほどね……」
「あーき!」
顔を寄せてひそひそと話していると、いきなり実花が割り込んできた。話している内容が内容だけに思わずドキっとする。
「仲いーじゃなーい」
実花はにやにやしながら冷やかしてくる。別に色気のある話をしてるわけじゃない。実花にも関係あることなんだけど、と思いつつもまあね、と流して、
「ほら、実花もなんか歌いなよ」
とリモコンを押しつけて話の内容に突っ込まれないうちに席を立つ。ちょっと冷やかされて、清水谷くんとの距離に照れてしまったのもある。玲くんのリサイタルがちょうど終わったところで部屋を出てトイレに向かった。
レイコちゃんか……木下にもそんなおセンチなところがあったのだ。実花がこのことを知ったらショックを受けるに違いないし、しばらく黙っていようと思いながら、ゆっくりお手洗いに向かった。
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