Little Miss One-way
思いつくままに恋愛小説をつづります。 大学生同士のちょっと変わった恋愛を書いた 「いびつなハート」連載中です。
いびつなハート 15 中庭にて5
トイレから戻ってくると加川くんが歌っていた。あまり上手じゃなく、自分の知っている彼とのイメージのギャップに吹き出しそうになった。自分の座っていた席を見ると玲くんが横になってぐだぐだしていて、そこには戻れそうになかった。どこに座ろうかと思い見渡すと入口近くのえりの隣りだけぽっかりと空いていた。
あまり気が進まない、でも避けるのも不自然だと思いそこに座る。えりの向こう側には加川くんが座っていて歌をうたっている。私たちが高校生ぐらいの時に流行ったポップソングだ。あまり上手じゃないけど、声の響きに反応して胸のあたりがじんわりとしてきて、テレビ画面に流れる歌詞を見る横顔に触れたい気持ちが湧いてくる。
自分の飲んでいたビールのコップをとり寄せ一口飲むと、えりが話しかけてきた。
「萱野さんですよね、はじめまして」
「はじめまして。えりちゃんだよね」
「あの、突然ですけど、萱野さんて、火曜の心理学A取ってません?」
「うん、とってる。あれえ、えりちゃんもいたんだ?」
全く気付かなかったが同じ授業を取っていたようだ。
「よく私に気付いたね?」
「ハイ、あの授業人文学部の二年生がほとんどでほかの学部の人ってあまりいないんです。あのセンセイいつも当てるとき、なぜか学部言うじゃないですか?」
「いういう。工学部の萱野さん、とかって」
「そう、それで工学部って圭ちゃんと同じだーと思って。工学部って女性が少ないイメージだったから余計印象に残ってて」
加川くんのこと圭ちゃんって呼んでるんだ。とちょっとショックを受ける。
「あの授業、文系の科目をいくつか選択で受けなきゃいけないから選んだんだけど、臨床心理学っていうのかな? 子供育てるのに役立ちそうな授業だよね」
「ハイ、なんか女性にとって大事な知識多いですよね。興味深いです」
なんだかんだで心理学Aの授業のことがきっかけで話が弾む。
えりは見た目は涼しげな眼もとの美人で、ちょっと人見知りっぽいから、大人しい上に、きつそうな印象を与えるが、話してみると明るく屈託がなく話しやすい。
二人で話していると影山くんや玲くんが途中で混ざってきたりしてちょっかいを出してくる。そんな感じですっかりこのメンバーの中に溶け込んでしまった。
えりと加川くんが参加しているフットサルサークルの件で話が盛り上がっているところで、えりが時計を見ながら立ち上がった。
「いけない、そろそろ帰らないと」
「え、もう? まだ電車あるでしょ?」
影山くんが残念そうに一言。携帯の時計を見ると二十二時半だった。
「実家なんで、あまり遅いと親が心配するんです。家はS谷の辺りなんで近いし、まだ十分電車はありますけど」
そこで木下がふと気づいたように言う。
「あれ、今日実花は大丈夫なの?」
「今日はあきの家に泊まるって言ってきた」
「えりちゃんも私のうちくることにすれば?」
私が誘うと、うーん、と少し迷ってから言った。
「明日バイトで早いんで、やっぱ帰ります」
そう言うと、じゃあ、と荷物をまとめて席を立とうとするえりに木下が声をかけた。
「バイクで送って行こうか。俺はあまり酒飲んでないし」
木下は多分実花を送っていくつもりでセーブしていたのだと思う。えりはまた迷った様子で加川くんを見る。すると加川くんが
「もう遅いし、木下の厚意に甘えたら?」
と、進める。えりはゆっくりうなずくと、お願いしますといって、木下と一緒に部屋を出て行った。
「なんか私、不安だよ……あき……」
実花が泣きそうな顔で、でも私にだけ聞こえるような小さな声で呟いた。
16へ
あまり気が進まない、でも避けるのも不自然だと思いそこに座る。えりの向こう側には加川くんが座っていて歌をうたっている。私たちが高校生ぐらいの時に流行ったポップソングだ。あまり上手じゃないけど、声の響きに反応して胸のあたりがじんわりとしてきて、テレビ画面に流れる歌詞を見る横顔に触れたい気持ちが湧いてくる。
自分の飲んでいたビールのコップをとり寄せ一口飲むと、えりが話しかけてきた。
「萱野さんですよね、はじめまして」
「はじめまして。えりちゃんだよね」
「あの、突然ですけど、萱野さんて、火曜の心理学A取ってません?」
「うん、とってる。あれえ、えりちゃんもいたんだ?」
全く気付かなかったが同じ授業を取っていたようだ。
「よく私に気付いたね?」
「ハイ、あの授業人文学部の二年生がほとんどでほかの学部の人ってあまりいないんです。あのセンセイいつも当てるとき、なぜか学部言うじゃないですか?」
「いういう。工学部の萱野さん、とかって」
「そう、それで工学部って圭ちゃんと同じだーと思って。工学部って女性が少ないイメージだったから余計印象に残ってて」
加川くんのこと圭ちゃんって呼んでるんだ。とちょっとショックを受ける。
「あの授業、文系の科目をいくつか選択で受けなきゃいけないから選んだんだけど、臨床心理学っていうのかな? 子供育てるのに役立ちそうな授業だよね」
「ハイ、なんか女性にとって大事な知識多いですよね。興味深いです」
なんだかんだで心理学Aの授業のことがきっかけで話が弾む。
えりは見た目は涼しげな眼もとの美人で、ちょっと人見知りっぽいから、大人しい上に、きつそうな印象を与えるが、話してみると明るく屈託がなく話しやすい。
二人で話していると影山くんや玲くんが途中で混ざってきたりしてちょっかいを出してくる。そんな感じですっかりこのメンバーの中に溶け込んでしまった。
えりと加川くんが参加しているフットサルサークルの件で話が盛り上がっているところで、えりが時計を見ながら立ち上がった。
「いけない、そろそろ帰らないと」
「え、もう? まだ電車あるでしょ?」
影山くんが残念そうに一言。携帯の時計を見ると二十二時半だった。
「実家なんで、あまり遅いと親が心配するんです。家はS谷の辺りなんで近いし、まだ十分電車はありますけど」
そこで木下がふと気づいたように言う。
「あれ、今日実花は大丈夫なの?」
「今日はあきの家に泊まるって言ってきた」
「えりちゃんも私のうちくることにすれば?」
私が誘うと、うーん、と少し迷ってから言った。
「明日バイトで早いんで、やっぱ帰ります」
そう言うと、じゃあ、と荷物をまとめて席を立とうとするえりに木下が声をかけた。
「バイクで送って行こうか。俺はあまり酒飲んでないし」
木下は多分実花を送っていくつもりでセーブしていたのだと思う。えりはまた迷った様子で加川くんを見る。すると加川くんが
「もう遅いし、木下の厚意に甘えたら?」
と、進める。えりはゆっくりうなずくと、お願いしますといって、木下と一緒に部屋を出て行った。
「なんか私、不安だよ……あき……」
実花が泣きそうな顔で、でも私にだけ聞こえるような小さな声で呟いた。
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