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Little Miss One-way

思いつくままに恋愛小説をつづります。 大学生同士のちょっと変わった恋愛を書いた 「いびつなハート」連載中です。

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2009/04/29

いびつなハート26  God Bless

 年末は実家に帰って過ごし、新年が明けると学校が始まるより少し早目にアパートに戻ってきた。
 誰にも気兼ねせず、お昼に起きてコーヒーを入れ、炬燵に入る。実家を出て四月で丸二年になるけれど、実家にいる時よりも一人でアパートで過ごすほうが落ち着くようになってきた。のんびりコーヒーを飲んでいると、炬燵の上の携帯が鳴った。木下だった。
「もしもし」
「あ、俺俺。あけおめ。もう戻ってる?」
 今年も相変わらずハイテンションだ。声のトーンが嫌というほど高い。
「おめでとう。戻ってるよ。どうしたの?」
「初詣行こうぜ。学校の裏の神社あるじゃん? 今家近い奴に声かけてんの」
「お、いいね。で、誰誘ったの?」
「実花誘ったんだけどまだ親の実家にいるってさ。あと尾崎と、加川」
 どきん、と心臓が跳ねる。電話越しに伝わってしまうんじゃないかと思うぐらい動揺していた。木下はそんな私の様子には気付かないようだ。
「じゃあ五時に神社な」
 そう言って電話を切ってしまった。いきなり電話してきて、騒々しい奴だ。
 久しぶりに加川くんに会えると思うと胸のあたりがほわっと暖かくなって、同時に落ち着かなくなった。実花や清水谷くんの想いに中てられたのか、年末からずっと加川くんに会いたかった。でも私は加川くんの携帯を知らなかったし、家にいきなり押し掛けるほどかというとそれも違っていた。まだ二時前だったけど、私は出掛ける準備を始めた。

 五時少し前に神社の前に行くと、すでに木下と尾崎くんが居た。加川くんはまだ来ていないようだ。木下が私に気付くとおう、といつものようにぶっきらぼうに挨拶した。尾崎くんも気付いて、お互いにおめでとう、と新年らしい挨拶をする。
「それかぶってきたんだ」
 清水谷くんが買ってくれた茶色いチェックのキャスケットを指して木下が言う。
「うん、気に入ってるから」
 そう言うと木下はにやにやとちょっと意地悪な笑みを浮かべた。
 誰からともなくそれぞれの年末年始の話をする。尾崎くんがお雑煮の地域差について語っているところで加川くんが歩いてくるのが見えた。
「その帽子!」
 私は加川くんを見て挨拶より先にそんな言葉が口を衝いて出た。加川くんも目を丸くして私の帽子を見ている。加川くんもチェックのキャスケットをかぶっていたのだ。私のよりも少し暗い茶色で、形も平たいけど、そっくりだ。
「おまえら、カブりすぎだぞ。帽子だけに」
 木下がくだらないことをいう。
「俺はもうずっと前からこれ愛用してんだよ。カブってきたのは萱野でしょ」
「私加川くんがそれかぶってんの初めて見たし、似合うやつ選んでもらったんだもん」
「俺だってこれもらいもんだし」
 などとやりあいながら神社に向かう。尾崎くんものんびりした口調で言う。
「その帽子二人ともすごい似合ってるよね。偶然カブったのもわかるよ」
「そう言えばお前らってなんとなく雰囲気似てんのかな」
 木下がそんなことを言い出し、ちょっとうれしくなる。でも少しでもうれしいそぶりを見せたら加川くんへの気持ちがばれてしまいそうで、そうかな、と無関心そうにした。加川くんもそうか? とそっけない反応だった。矛盾しているけどちょっとはうれしそうな反応を見たかったような気もした。
 鳥居を潜りまっすぐ参道を歩く。拝殿に着くとみんなお賽銭を出した。木下は四十五円、私は十五円、加川くんと尾崎くんは五円玉を出した。
「木下、何で四十五円なの」
 私は思わず聞いた。五円はご縁の語呂合わせだから、加川くんと尾崎くんはわかる。
「始終ご縁がありますようにだろ」
「うわ、始終って欲張りだね」
「俺も四十五円にしよ」
 木下の解説を聞いて尾崎くんが十円玉を出す。
「ゲンキンだね。お金のことだけに」
 また木下がくだらないことを言ったので、無視してさっさとお参りすることにした。
 手を合わせて目を閉じる。無事進級できますように、とかいろいろお願い事はあったけど、最後に加川くんともっと近くなれますように、と強くお祈りした。
 目を開けるともうみんなお祈りを終わっていた。顔を覗き込んでいた加川くんと目が合いドキッとする。親指で後ろを指して
「飲みに行くってさ」
 と言って先に歩きだした。私もキャスケット帽の加川くんのあとを追って歩き始めた。

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