Little Miss One-way
思いつくままに恋愛小説をつづります。 大学生同士のちょっと変わった恋愛を書いた 「いびつなハート」連載中です。
いびつなハート28 バランス
木下の家に着くと、アパートの前にはもうバイクがとまっていた。木下の部屋は三○三号室。おじゃましまーす、と入っていくと、木下はなにやらばたばたと片付けをしていて、尾崎くんはキッチンの小さな冷蔵庫をあさっていた。そんな二人の様子に落ち着かず、しばらくそわそわと立っていると、冷蔵庫の扉の前にしゃがんだ尾崎くんが
「あー木下、おまえんち食べ物なんもねぇな! 酒ばっか!」
といらいらした様子で叫んだ。足元には冷蔵庫から出したらしいビールの缶が並んでいる。
「だって俺家で飯食わないもん」
「まあそうか。よし、買い出しに行こう。誰かついてきて」
尾崎くんの提案に木下と加川くんと私は顔を見合わせる。と同時に木下が
「じゃんけんぽいっ!」
と叫んだ。とっさに木下と私はチョキ、加川くんがパーを出した。
「よし、加川、買い出し組ね」
尾崎くんはそう言うと加川くんを引っ張って買い物に出かけた。
木下は二人を送り出すと、冷蔵庫の前に並んだビールの缶をテーブルにせっせと運び、座布団に座って、隣の座椅子をぽんぽんと叩いた。私は座椅子に座る。
「先に始めてようぜ。今日は紅一点だから座椅子に座らせてやろう」
「それはどうも。じゃあ乾杯」
ぱすんと缶を当てて、乾杯するとビールを飲む。十分に暖かくなった部屋で炬燵に入って飲むよく冷えたビールはおいしかった。
「おまえ清水谷とはどうよ?」
一口飲むと早速木下はこんなことを言い出した。きっと聞きたくてしょうがなかったんだろう。
「どうって、別に。あれから会ってないし。あ、メールはしてるよ」
「あっそ。なんだつまんねえ。この間清水谷に会ったときにこにこしてたからさ」
「ふうん、休み中会ったんだ。そうか、実家の方で?」
「そうそう。清水谷と、……レイコと」
レイコちゃんか……。クリスマスに会った彼女の顔が浮かび、それから泣きそうな実花の顔が浮かんだ
「高校んときよく行ったとことか行ってさ、楽しかった」
木下はちょっと遠くを見て笑みを浮かべながら言った。ビールをごくりと飲む。
「ところで、お前実花からいろいろ聞いてる?」
「うん、まあ、遊園地行ったときにきいた」
「そっか。じゃあお前にこんなこと言ったら、最低なやつだと思われるかもしれないけど……」
そういって木下はビールを一口飲むと一呼吸おいた。
「俺、レイコのこと好きなんだ。もうどうしようもない」
木下は悲しそうな、切なそうななんともいえない顔をしていた。こんな木下の顔は初めて見た様に思う。
「でも実花に言えない。実花の俺への気持ちは伝わってるし、実花に言ったらそれでもいいからっていわれそうで、そしたら俺、実花のこと振り回して傷つけそうでさ」
木下はいつものように私が聞いていなくてもお構いなしという感じで、でも真剣に話していたけれど、私のほうはいつものように気を逸らすことはなかった。木下の言葉の一つ一つが胸にずしずしと響いた。
「実花は一生懸命だからね」
私はあきらめないといった実花の表情を思い出していた。そして今の木下の真剣な表情。二人ともお互いを思いやる気持ちが溢れている。
「でも木下も一生懸命だから。自分の気持ちにはうそはつけないし。心配しなくても悪いようにはならないよ。大丈夫」
私はそういうと木下に向けて思いっきり微笑んだ。
「お前、適当だな」
木下はそう言って私のほっぺたをむにっと摘んで微笑むと、小さい声でうそうそ、ありがとな、と言った。
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「あー木下、おまえんち食べ物なんもねぇな! 酒ばっか!」
といらいらした様子で叫んだ。足元には冷蔵庫から出したらしいビールの缶が並んでいる。
「だって俺家で飯食わないもん」
「まあそうか。よし、買い出しに行こう。誰かついてきて」
尾崎くんの提案に木下と加川くんと私は顔を見合わせる。と同時に木下が
「じゃんけんぽいっ!」
と叫んだ。とっさに木下と私はチョキ、加川くんがパーを出した。
「よし、加川、買い出し組ね」
尾崎くんはそう言うと加川くんを引っ張って買い物に出かけた。
木下は二人を送り出すと、冷蔵庫の前に並んだビールの缶をテーブルにせっせと運び、座布団に座って、隣の座椅子をぽんぽんと叩いた。私は座椅子に座る。
「先に始めてようぜ。今日は紅一点だから座椅子に座らせてやろう」
「それはどうも。じゃあ乾杯」
ぱすんと缶を当てて、乾杯するとビールを飲む。十分に暖かくなった部屋で炬燵に入って飲むよく冷えたビールはおいしかった。
「おまえ清水谷とはどうよ?」
一口飲むと早速木下はこんなことを言い出した。きっと聞きたくてしょうがなかったんだろう。
「どうって、別に。あれから会ってないし。あ、メールはしてるよ」
「あっそ。なんだつまんねえ。この間清水谷に会ったときにこにこしてたからさ」
「ふうん、休み中会ったんだ。そうか、実家の方で?」
「そうそう。清水谷と、……レイコと」
レイコちゃんか……。クリスマスに会った彼女の顔が浮かび、それから泣きそうな実花の顔が浮かんだ
「高校んときよく行ったとことか行ってさ、楽しかった」
木下はちょっと遠くを見て笑みを浮かべながら言った。ビールをごくりと飲む。
「ところで、お前実花からいろいろ聞いてる?」
「うん、まあ、遊園地行ったときにきいた」
「そっか。じゃあお前にこんなこと言ったら、最低なやつだと思われるかもしれないけど……」
そういって木下はビールを一口飲むと一呼吸おいた。
「俺、レイコのこと好きなんだ。もうどうしようもない」
木下は悲しそうな、切なそうななんともいえない顔をしていた。こんな木下の顔は初めて見た様に思う。
「でも実花に言えない。実花の俺への気持ちは伝わってるし、実花に言ったらそれでもいいからっていわれそうで、そしたら俺、実花のこと振り回して傷つけそうでさ」
木下はいつものように私が聞いていなくてもお構いなしという感じで、でも真剣に話していたけれど、私のほうはいつものように気を逸らすことはなかった。木下の言葉の一つ一つが胸にずしずしと響いた。
「実花は一生懸命だからね」
私はあきらめないといった実花の表情を思い出していた。そして今の木下の真剣な表情。二人ともお互いを思いやる気持ちが溢れている。
「でも木下も一生懸命だから。自分の気持ちにはうそはつけないし。心配しなくても悪いようにはならないよ。大丈夫」
私はそういうと木下に向けて思いっきり微笑んだ。
「お前、適当だな」
木下はそう言って私のほっぺたをむにっと摘んで微笑むと、小さい声でうそうそ、ありがとな、と言った。
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