Little Miss One-way
思いつくままに恋愛小説をつづります。 大学生同士のちょっと変わった恋愛を書いた 「いびつなハート」連載中です。
いびつなハート 7 風
十二月もなかば、もうすぐ冬休みということで実験の打ち上げと、忘年会をかねて飲み会が開かれた。メンバーは大学一年の教養科目のクラス分けで一緒だった十二人だ。今はみんなそれぞれの専攻別に別れてしまっているが、集まるときは大体このメンバーだ。
飲み会はなぜか工学部棟の屋上に鍋とフライパンと缶ビールやチューハイをならべて行われていた。ときどき強い風が吹くと耐えられないほど寒く、皆から口々に叫び声があがる。まあそれが楽しくもあり、みんなのテンションが上がる。
それにしても工学部の男女比率というのはかなりアンバランスで、男子十人の中に女子は二人しかいない。もう一人の女の子は実花といって、まったくどこをどう間違えてこんな男臭いところに入って来たのかというような華やかな女性だ。木下と同じ建築科で、インテリアデザイナーを目指しているらしく、本人も見るからにオシャレさんだ。木下のバンドの大ファンだと公言して、木下のそばにいつもいるが、見ているとバンドというよりは木下本人のファンのような気がしないでもない。無味乾燥な私とは正反対のタイプで、実花と私は多分こんな風に出会わなければ言葉を交わすこともなかっただろうなとおもう。
飲み会はそんな実花と木下を中心に寒いのを物ともせず盛り上がっていた。
駅前のレストランでアルバイトをしており、料理が得意な尾崎くんが焼きそばや炒め物を次々に作り、並べていく。
実花が鍋の番をしながらしきりとおしゃべりに興じているその奥で、加川くんがみんなのやりとりに口の端をあげていつもの様に薄く笑みながら、発泡酒の缶を傾けていた。私とは対角線上の、一番遠い席にいる。彼とは、あのエレベーターであった日以来、久しぶりに会った。あの腕の感触を思い出すと、胸が燃えるように熱くて、今吐いた息までいつもより二、三度上昇しているんじゃないかと思える。ぼーっと彼を目で追っていると、いきなり実花に話を振られた。
「なに?」
「だからぁ〜、木下のバンドのギターの清水谷くんがあきに会いたがってるんだって」
清水谷くんと言われてもすぐには顔が思い浮かばなかった。木下のバンドは木下とボーカルの明るさと容姿のよさが高インパクトなため、他のメンバーの印象が薄かったがたしかに打ち上げに参加したときに会った気がする。物静かな人で嫌いな感じではなかったはずだ。
「あきのこと気に入ったらしいよ。へんなやつだよな」
木下が言う。なんて言い草だ、と思ったが敢えてなにもいわないでいると、実花が、
「あきはなちゅらるでぴゅあでかわいいもん!」
などとフォローするのが逆に悲しい。要するに地味ってことだ。少し加川くんの様子が気になって彼の方を見たけどまた例の薄い笑いを浮かべているだけだった。
実花がそろそろ帰るといって十一時半ごろ抜け、木下が送って行った。とたんに華やかさを失った飲み会はたらたら、ぐだぐだ、まったりと続いていたが、さすがに寒すぎるということで軽音部の部室に移動することになった。
軽音部の部室は、狭い四畳半にドラムセットがむりやり押し込まれており、その隙間に楽器や楽譜が詰め込まれている。ここで本当に練習をしているのがと疑いたくなる有様だった。
8へ
飲み会はなぜか工学部棟の屋上に鍋とフライパンと缶ビールやチューハイをならべて行われていた。ときどき強い風が吹くと耐えられないほど寒く、皆から口々に叫び声があがる。まあそれが楽しくもあり、みんなのテンションが上がる。
それにしても工学部の男女比率というのはかなりアンバランスで、男子十人の中に女子は二人しかいない。もう一人の女の子は実花といって、まったくどこをどう間違えてこんな男臭いところに入って来たのかというような華やかな女性だ。木下と同じ建築科で、インテリアデザイナーを目指しているらしく、本人も見るからにオシャレさんだ。木下のバンドの大ファンだと公言して、木下のそばにいつもいるが、見ているとバンドというよりは木下本人のファンのような気がしないでもない。無味乾燥な私とは正反対のタイプで、実花と私は多分こんな風に出会わなければ言葉を交わすこともなかっただろうなとおもう。
飲み会はそんな実花と木下を中心に寒いのを物ともせず盛り上がっていた。
駅前のレストランでアルバイトをしており、料理が得意な尾崎くんが焼きそばや炒め物を次々に作り、並べていく。
実花が鍋の番をしながらしきりとおしゃべりに興じているその奥で、加川くんがみんなのやりとりに口の端をあげていつもの様に薄く笑みながら、発泡酒の缶を傾けていた。私とは対角線上の、一番遠い席にいる。彼とは、あのエレベーターであった日以来、久しぶりに会った。あの腕の感触を思い出すと、胸が燃えるように熱くて、今吐いた息までいつもより二、三度上昇しているんじゃないかと思える。ぼーっと彼を目で追っていると、いきなり実花に話を振られた。
「なに?」
「だからぁ〜、木下のバンドのギターの清水谷くんがあきに会いたがってるんだって」
清水谷くんと言われてもすぐには顔が思い浮かばなかった。木下のバンドは木下とボーカルの明るさと容姿のよさが高インパクトなため、他のメンバーの印象が薄かったがたしかに打ち上げに参加したときに会った気がする。物静かな人で嫌いな感じではなかったはずだ。
「あきのこと気に入ったらしいよ。へんなやつだよな」
木下が言う。なんて言い草だ、と思ったが敢えてなにもいわないでいると、実花が、
「あきはなちゅらるでぴゅあでかわいいもん!」
などとフォローするのが逆に悲しい。要するに地味ってことだ。少し加川くんの様子が気になって彼の方を見たけどまた例の薄い笑いを浮かべているだけだった。
実花がそろそろ帰るといって十一時半ごろ抜け、木下が送って行った。とたんに華やかさを失った飲み会はたらたら、ぐだぐだ、まったりと続いていたが、さすがに寒すぎるということで軽音部の部室に移動することになった。
軽音部の部室は、狭い四畳半にドラムセットがむりやり押し込まれており、その隙間に楽器や楽譜が詰め込まれている。ここで本当に練習をしているのがと疑いたくなる有様だった。
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